交渉人

前に見たときは「ふ〜ん、面白いね」ぐらいの佳作的評価しかしていなかったのだが、今日TVで放送されているのを見たら・・・評価撤回!面白いですよ、この映画。
何故前に見たときに素直に見れなかったのか?「グリーンマイル」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のせいですね。(関連性は・・・)


あらすじを簡単に言うと

シカゴ警察No.1の「交渉人」ダニーは、警察内の年金基金の横領事件に絡む殺人事件に巻き込まれ、犯人とされてしまう。同僚達からも疑われ味方はひとりも居なくなってしまい、彼は内務調査局のニーバウムが事件に関わっていると思い訪ねるが、成り行きから人質をとって連邦警察ビルに籠城する羽目になってしまう。自分の無実を証明するために彼がとった行動は、自分と同じくNo.1交渉人のセイビアンを自分との交渉人として指名する事だった。
「真犯人は自分と同じ警察署内に隠れている。仲間が信用できない以上、信じられるのは赤の他人であるお前だけだ」と言うダニーに、セイビアンは「私はお前が真犯人であろうとなかろうと関係ない。私の仕事は人質を無事救出するだけだ」と応える。
2人の天才交渉人がそれぞれの思惑から話術・駆け引きを交えて交渉をしていく。しかし交渉の最中、別系統からの指示でシカゴ警察の突入が始まり、ダニーは見せしめとして突入警官の一人を撃ってしまう。

ちょっと文章で書くと印象が違う感じもするけど、ダニー役のサミュエル・L・ジャクソンと、セイビアン役のケヴィン・スペイシーの演技が力入ってます。自分の無実を晴らし、真犯人の罪を暴こうと交渉するサミュエル・L・ジャクソンの切迫した演技に対して、冷静に自分のスタイルを崩さずに仲間の警官達を煙に巻きながら交渉していくケヴィン・スペイシー
評決のとき」でも共演しているふたりが、互いに手の内を知り尽くした交渉人同士の対決を盛り上げる。交渉を打ち切り強行突入をはかろうとする警官隊を牽制し、FBIの介入を阻止しながら、徐々に事態の核心に迫って行くふたり。どちらも素晴らしい芝居を見せますが、特にこの計算高そうな顔付きでハッタリをかますケヴィン・スペイシーはハマってますね。このキャラでもう一本撮っても良いんじゃないかと思うぐらいですね。


この映画の見所はやはり、二人の交渉中の会話。これに尽きるでしょう。

信じられるかどうかも解らないお互いの言葉、電話越しの会話の中から意図を掴み、お互いの心理状態を探っていく。この時点では犯罪者であるダニーの台詞が徐々にセイビアンを真実に導いていく。その駆け引きが実にスリリングで、その緊張感をラッセル・カーペンターの撮影が盛り上げて、そこにお約束のアクションを盛り込んで、タイトルの地味さからは考えられない秀作に仕上がっています。


タイトルと言えば、「交渉人」の原題は THE NEGOTIATOR 。何故この響きの良さげな原題を使わなかったのかと言えば、同じ時期にエディ・マーフィ主演の「METRO」という映画を持ってきた時に邦題を「ネゴシエーター」と付けてしまったため、本家本元の「THE NEGOTIATOR」は同じタイトルが使えなくなってしまったのは有名な話。しかし、この翌年にデヴィッド・カルーソとチャールズ・ダットン主演の映画、原題「Deadlocked」は「ザ・ネゴシエーター」と邦題を振られ公開されていた。(なんだかなぁ)


さて、たかがTVでやっていた映画に何故こんなに力説しているかというと、前回見た時に自分がどれだけちゃんと映画を見ていないかを気付かせてくれたからだ。
所々に仕掛けられている台詞の妙。これに気付かなければこの映画は多少の伏線はあるにしても、単なる内部告発に置ける平凡なアクション映画に成り下がってしまう。正直に言えば、前回見たときにはこれに気が付かなかった(汗)
いや、自分が間抜けと言えばそれまで*1ですけど・・・


典型的な頭の悪いFBIの描写と突入時の手際の悪さは目をつぶって頂けば、この映画はかなり高い評価を受けるべきだと思うのですが、いかがでしょう?

*1:一度で気が付かないのは映画として致命的なのかも