夜空は何故暗いのか -その2-

あぐあぐ


昨日はオルバースのパラドックスまでたどり着いて終わってしまったので、今日はその続きを。


一応前回分はこちら


さて、事実と異なるこの論理には何かしらの過ちを含んで居ることは間違いない。
そしてオルバース自身も解法を披露した。それは『宇宙空間は真空で何もない空間ではない』と言うものだった。これは一見もっともらしく聞こえる。


が、もっともでもなんでもない。確かに宇宙空間には雲や塵やガス等が散乱しており、一部では星の光を妨げるぐらいの密度を持っている所もある。これが彼方からの光を吸収して我々の所に届くべきものを減らしているとしたならば、これらは吸収した光の密度にしたがって発熱・発光し、やがては吸収した量とほぼ同じ輝きを発する事になる。これではパラドックスは消えないのだ。


では、別の方から考えてみよう。
前段で模式図である事を理由に無限の皮(距離)や無限の星を考えたが、これは実際にどうなのだろう。


ここで出てくるのがイギリス人天文学者のウィリアム・ハーシェルである。
彼は星々が均一の明るさで均等に散乱している模式図から、見た目に暗い星は明るい星よりも遠くにあるはずと仮定してそれぞれの明るさの星を数えていった。すると、驚くべき事に星の密集度は遠くへ行くにしたがって小さくなっていく事に気が付いた。
色々な方向についてこの密集度を測ってみた結果、ハーシェルは星がレンズ型に密集していると結論付けた。天の川として知られている部分は、レンズを横から見たように星が密集しており、それ以外の部分では星の密集度が低いというわけだ。


今では銀河系(天の川銀河)として知られるこのレンズ型の星の集団に、宇宙の星が全て含まれるとしたならば、ここにオルバースのパラドックスはトドメを刺される事になる。
仮に宇宙空間が無限に続き、皮が無限にあるとしても、そこに含まれる星の数は有限で、星を一つも含まない皮が延々と続く事だろう。
また、星の数が必要以上に多くとも、この密集状態が発見されてしまった以上、距離の比率と比例する程の数が皮に含まれるとは考えにくい。


さあ、ここにオルバースのパラドックスが沈黙したことを宣言しよう。
夜の暗さを愛してやまない人々もホッと胸をなで下ろす事だろう。
だが、これをお読みのあなたにはお解りだろう。・・・そう、この宇宙に銀河系は一つではないのだ。星座の名前を知らない人でも、簡単に幾つかの銀河系の名前を挙げる事ができる。


と、なると・・・


オルバースのパラドックスはまだ死んではいなかった。
無限の皮のなかに無限の(に見える)数の銀河や星雲が含まれるとするならば、やはり夜空は光に満ちあふれ、24時間営業のコンビニは繁盛し、夜に営業するべき職業の方々はみんな失業者となってしまう事となる。
これはいかん。やはり、論理・仮定のどこかに間違いが潜んでいるようだ。


この続きはまた後日。(まだ続くのか?)